本当にあった恐〜い話


番外

謎のオーバーハング

1987年秋  大井川中流部伊久美川合流点 川口発電所放水口直下

レポート: 佐々木勝


 この時期の大井川はいつも水は少ないが、それでも川口発電所から下流は十分航行可能である。  その日は川口から島田市の蓬莱橋までの10km,ほとんど瀬らしい瀬のない区間を,初心者グループでのんびりツーリングの予定だった。

 スタート前、私と他の数人が放水口からの強烈な水流をフェリーグライドして遊んでいた。

 当時、まだ初心者だった私は当然のごとく沈。水流に翻弄されながらも、この時点ではまだ、何ともいえぬスリルを楽しんでいた。  体はまだ水中にあったが、あたりが急に静かになり、流れを感じなくなった。エディーに入ったようだ。

 が、しかし、何かおかしい。いつまでたっても体が浮上しない。頭が何かにつかえている。

 まずい、オーバーハングに入ってしまった。

 一瞬緊張が走る。 放水口の右岸は大きな岩盤とコンクリートの護岸だが、オーバーハングしていたとは知らなかった。

 脱出しなければ。

 周囲が明るいから、天井づたいに行けば、すぐ外に出られるはずだ。  意外に冷静な(つもり)の自分に驚く。

 手を上に伸ばした。

 ん?...

 頭上を覆っていた黒い陰が動き、私はあっけなく水面に浮上した。 私のヘルメットを押さえつけていたのは岩ではなく、我が愛艇であった。 おそまつ。


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